本格的な冬を迎え、日本海を雷鳴と共に寒冷前線が通過しますが、これを能登や富山では”鰤起こし”と呼びます。”鰤起こし”は大漁の兆しでありこれが来ると漁港に緊張が走ります。

過去に比べると漁獲量は減少しているとはいえ、現在でも数千本単位の鰤が定置網にかかる事があり、現に今年の正月明け、七尾漁港にて2,500本あまりの水揚げがあったと報道されています。

鰤は各地で獲れる為、産地やサイズにより多くの名前を持ちますが、関西ではツバス、ハマチ、メジロ、ブリと出世していきます。

夏頃に姿を見せるツバスの刺身のあっさりとして若い味も捨てがたいものがありますが、やはり正月前後、富山湾内で捕れ氷見漁港に水揚げされる、10kgを越えた大型の鰤に優るものは無いでしょう。

寒の頃の鰤は脂がのって旨いと一口にいますが、やはり脂の質では養殖モノは天然に歯が立ちません。

その天然鰤はこの時期、肉の脂質含量が10%を上回り、甘味やうまみ成分も大きく増え、まさに絶品です。

同じアジ科のヒラマサやカンパチが夏に旬を迎えるのとは対照的です。

ところで、相性の良い食材を”出会いもの”と言いますが、鰤にとって”大根”は、まさに”出会いもの”でしょう。塩焼きやつけ焼きには大根おろしが欠かせませんし、頭やあら、かまの脂ののった身をあじわいつくす”ぶり大根”は冬の定番おかずです。鰤の粕汁もおいしいものですが、これにも大根が顔をのぞかせます。

腹身は刺身やすしネタに、背身は脂が少ないので照り焼きに、かまは塩焼きにすると最高です。また、正月の雑煮にも、一度つけ焼きしてからすまし仕立てにしたり、素焼きにしてから白味噌仕立てにしたり等、鰤を入れる家庭も多いようです。

木枯らし吹く中、天然ぶりの香ばしい香りが食卓にのぼるよう、黒門の魚屋は頑張っています。